
春の信州、里山を歩いていると、ふと風に揺れる白い花穂が目に留まりました。木々の合間にひっそりと咲くその花は「ウワミズザクラ」。一見すると桜には見えないその姿ですが、れっきとしたバラ科サクラ属の仲間です。
ウワミズザクラは、一般的なソメイヨシノのように花びらを広げるのではなく、小さな白い花が穂状に集まって咲くのが特徴。その姿はまるで柔らかなブラシのようで、どこか素朴な可憐さをたたえています。開花時期は4月中旬から下旬にかけて。ちょうど春が本格的に深まる頃、里山の緑に映えるようにして咲き始めます。
かつては、信州の里山や雑木林でよく見かけた木でしたが、今ではその姿を見かける機会も少なくなってきました。地域によっては、「ヤマザクラが終わると、次はウワミズザクラ」と季節の移ろいを知らせる存在でもありました。樹皮や葉には香りがあり、古くは防虫や民間薬として使われたことも。初夏には小さな実をつけ、それを果実酒やシロップにする地域の知恵も残っています。
こうした自然の営みは、長い年月のなかで土地と人が共に育んできた「暮らしの風景」とも言えるもの。ホテル玉之湯も、湧き出る温泉とともに、こうした信州の四季折々の自然に支えられてきました。何気ない一枝の花に、過ぎ去った季節や人々の暮らしの記憶が重なります。
この春、ウワミズザクラの花に出会えたことを、私はとても嬉しく思います。失われつつある風景だからこそ、そのひとときの美しさが心に残ります。そして、こうした自然の表情を、未来へと静かにつないでいくことが、私たちの役割なのだと感じています。
皆さまも、信州を訪れる際には、ふと足元や木の枝先に目を向けてみてください。思いがけない「春の宝物」に出会えるかもしれません。


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