〜“最安値”の裏側と宿泊料金の不思議〜
最近テレビやネットでよく目にする「トリバゴ(trivago)」のCM。
隣の宿泊客が「私は〇〇円で泊まった」と表示されるシーン、印象的ですよね。
でも、あのように“フロントでお隣さんの料金が見える”ことは、実際にはありません(笑)。
では、あのCMは何を伝えたいのでしょうか?
今回は、ホテル・旅館を運営する側の視点から少しだけ“メタサーチ”の仕組みをお話しします。
トリバゴは「メタサーチサイト」
トリバゴはホテルや旅館と直接契約しているわけではありません。
「メタサーチ」と呼ばれる仕組みで、楽天トラベル、じゃらんnet、Booking.comなどのOTA(オンライン旅行会社)が持っているプラン情報をまとめて表示し、最安値を比較するサイトです。
つまり、トリバゴ自身は宿泊プランを販売していません。
ユーザーがクリックして各OTAの予約ページへ移動すると、その“送客”によって手数料を得る仕組みです。
要するに、トリバゴは「宿泊予約の比較広告プラットフォーム」という位置づけになります。
「最安値表示」の本当の目的
CMでは「同じ部屋でも料金が違う」という点を強調しています。
確かにOTAによって料金差があることはありますが、
それはプランの内容(キャンセル条件、食事付き・なし、ポイント還元など)によるもので、
単純に“隣の人より安い”とは言い切れません。
また、こうしたメタサーチサイトは「最安値を提示してクリックを促す」ことが主目的。
そのため、実際に販売している宿泊施設の利益構造とは必ずしも一致しません。
旅館とホテルでは“売り方”が違う
ホテル業界では「素泊まり」「朝食付き」といった部屋単位の販売が主流で、
需要が落ちると「50%オフ」などの値下げも比較的容易です。
しかし旅館では、1泊2食付きで地元の食材を使った懐石料理を提供するため、
原価率が高く、単純な値下げは仕入れを割り込むリスクがあります。
“最安値競争”が激しくなると、料理やサービスの質が維持できなくなるのです。
背後にある「レベニューシステム」
この“価格の上下”を生み出しているのが、最近よく耳にする「レベニューシステム」。
AIが過去の販売データや需要予測をもとに、リアルタイムで宿泊料金を変動させる仕組みです。
需要が高ければ自動的に値上げ、低ければ値下げ。
ここ数年、都内のホテル料金が高騰しているのも、
こうしたシステムによる“需給連動型の価格調整”が進んでいるためです。
料金は“株価”のように動く時代へ
かつて主流だった「早割」「直前割」などのわかりやすい割引よりも、
今はまるで株価のように、日々料金が変わる“相場制”になってきました。
「半額!」という広告の裏で、繁忙期にはしっかり高騰している。
そんな“価格の波”が、宿泊業界にも訪れています。
〜価格の見方を変えてみよう〜
料金の上げ下げに「良し悪し」をつけるのは難しいですが、
少なくとも今の宿泊業界では「AIによる価格変動」が当たり前になっています。
宿を選ぶとき、「安いか高いか」だけでなく、
「どんな料理・体験が含まれているのか」「どんな想いで運営されているのか」にも
目を向けていただけると、旅の価値はもっと豊かになるはずです。
ホテル玉之湯では、AIにも負けない“人の温かさ”を大切に、
これからも心に残るおもてなしを続けてまいります。
✳️ 次回予告
次回は「レベニューシステムって何?」というテーマで、
AIがどのように宿泊料金を算出しているのか、もう少し詳しくご紹介します。
ホテル玉之湯 内藤幸宏より


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